
野町和嘉氏の写真展『人間の大地』を拝見し、同じ写真家として、その写真への向き合い方に圧倒されました。
氏の作品は、表面的なドキュメンタリー写真とは一線を画しています。それは単に遠い異国の生活を切り取ったものではなく、何年もの歳月をかけて被写体と深く向き合い、その魂の奥底に触れたからこそ撮りうる、類まれな写真群でした。
特に心を奪われたのは、アフリカやチベットの人々の肖像写真です。そこには、レンズを向けられた一瞬の表情ではなく、その人が生きてきた時間、大地に刻まれた風雪、そして何よりも人間としての尊厳が写し出されていました。それは、写真家というフィルターを通しながらも、被写体の存在そのものをありのままに捉えようとする、野町氏の真摯な姿勢の表れだと感じます。
写真はしばしば「真実を写す」と言いますが、野町氏の作品が問いかける「真実」は、それよりも遥かに深く、重いものです。それは、人間が生きる根源的な力、そしてそれが環境や文化によってどう形作られているかという、生命そのもののありようでした。
現代は、誰でも簡単に「世界」を切り取ることができる時代です。しかし、そこにはえてして、表層的な情報や、刹那的な美しさが溢れています。野町氏の作品は、そうした時代だからこそ、私たちに「写真を撮る意味」を静かに問いかけているように感じました。
これまで、私は主に商業ベースで風景や日常の断片を撮ってきました。しかし、野町氏の作品を見て、もっと深く、人間の内面に迫るような写真を撮りたいという思いが強くなりました。単に「人を撮る」のではなく、その人の人生、背景にある物語、そして何よりもその人が持つ人間性を写し出すということです。
野町氏のような境地に達するには、途方もない努力と時間が必要でしょう。しかし、彼の作品から受け取った感動と教訓を胸に、これからも写真と真摯に向き合っていきたいと決意を新たにしました。


