「応援」と「依存」は違う – SNS時代に考えたい、推し活・集客・影響力の責任

「応援」と「依存」は違う| 杉山宣嗣

SNSが当たり前になった今、Instagram、TikTok、X、YouTube、ライブ配信などを通じて、モデルやインフルエンサー、ライバー、クリエイターを応援する「推し活」は、一つの文化として定着しました。

好きな人を応援することは素晴らしいことです。

作品を購入したり、イベントに参加したり、ライブ配信でギフトを送ったりすることで、夢を追う人の活動を支えることができます。そして、応援される側も、その支えによって新たな挑戦ができます。

本来、推し活とは、お互いにとって幸せな関係であるはずです。

しかし近年、その「応援」が過度な依存や精神的・金銭的負担へと変わり、SNS上のトラブルや、時には深刻な事件へと発展するケースも報じられるようになりました。

この記事は、誰かを批判するためではありません。

SNSを利用するすべての人が、安心して活動し、安心して応援できる環境を考えるための注意喚起として書いています。

SNSは距離を縮めた

昔、芸能人やモデルはテレビや雑誌の向こう側の存在でした。

今は違います。

コメントをすれば「いいね」が返ってくることもあります。ライブ配信では名前を呼んでもらえることもあります。DMでやり取りができる場合もあります。

SNSは、人と人との距離を大きく縮めました。

これは素晴らしい変化です。

一方で、その距離の近さが「自分は特別な存在だ」「もっと応援しなければ」「もっと近づけるかもしれない」という錯覚を生みやすくなったことも事実です。

SNS上でのつながりは、あくまで発信活動の一環であることがほとんどです。

現実の人間関係とは異なることを忘れてはいけません。

「応援」が義務になった瞬間

推し活は、本来自由なものです。

しかしSNSでは、

「毎日投票してください。」

「ギフトをお願いします。」

「ランキングイベントなので協力してください。」

「本気で夢を応援してくれる人だけお願いします。」

このような発信を頻繁に見かけます。

お願いをすること自体は悪いことではありません。

しかし、それが毎日続き、「応援しない人は本当のファンではない」と受け取られかねない表現になれば、応援する側は心理的なプレッシャーを感じます。

応援は、自分がしたいからするものです。

罪悪感や義務感からするものではありません。

SNSの影響力と「集客」

最近では、モデルやインフルエンサーが、自らバーやカフェ、美容サロン、アパレルブランド、撮影会などを運営することも珍しくありません。

SNSで「ぜひ遊びに来てください」「イベントを開催します」と告知することは、事業者として当然の営業活動です。

問題なのは、その伝え方です。

例えば、

「都合が合えばぜひ来てください。」

「来られる範囲で応援していただけたら嬉しいです。」

このような発信は健全な集客です。

一方で、

「まだ来てないよね?」

「毎回来る人だけが本当のファン。」

「今日は売上が厳しいから助けて。」

「〇万円以上使ってくれた人だけ特別扱いします。」

「断られても何度もDMを送る。」

このような行為は、営業ではなく、相手に心理的な圧力をかける勧誘になりかねません。

特にバーなど、お酒や飲食を伴う店舗では、一度の来店でも決して安くない出費になることがあります。

「応援だから」という理由で、生活に無理をして通い続けたり、高額な飲食やボトルを繰り返し注文したりすることは、健全な応援とは言えません。

発信者は、フォロワーの善意に依存するのではなく、「来られる時に来ていただければ十分です」「無理はしないでください」と伝えられる姿勢が、結果として長く信頼されることにつながります。

SNSで実際に起きているトラブル

SNSの普及に伴い、さまざまなトラブルも増えています。

例えば、

・アカウント凍結
・なりすまし
・誹謗中傷
・無断転載
・執拗なDM
・ファン同士の対立
・高額な課金トラブル

こうした問題は、もはや珍しいものではありません。

さらに近年では、SNSで知り合った相手とのトラブルや、配信者・インフルエンサー・アイドルなどへの過度な執着が背景の一つとみられる事件も報じられています。

中には、ストーカー行為や脅迫だけでなく、実際に殺傷事件へ発展したケースもあり、多くの人に衝撃を与えました。

もちろん、こうした事件は「SNSが原因」と単純に言えるものではありません。

精神状態、人間関係、金銭問題など、複数の要因が重なって発生するものです。

しかし、SNSによって距離感が曖昧になり、一方的な思い込みや過度な依存が深刻な結果につながる危険性があることは、私たち全員が認識しておくべきでしょう。

影響力を持つ人には責任がある

フォロワーが多い人ほど、その一言が誰かの行動を大きく左右します。

だからこそ、

・応援を強制しない
・課金を煽りすぎない
・来店を義務のように感じさせない
・断る自由を尊重する
・ファン同士を競わせすぎない

こうした姿勢が求められます。

短期的な売上やランキングよりも、「この人は安心して応援できる」と思ってもらえることのほうが、長い目で見れば大きな財産になります。

応援する側も、自分の人生を大切に

一方で、応援する側にも大切なことがあります。

推しは、あなたの人生を豊かにしてくれる存在かもしれません。

しかし、あなたの人生そのものではありません。

応援のために生活費を削る。

仕事や家族との時間を犠牲にする。

断ることに罪悪感を抱く。

こうした状態になっているなら、一度立ち止まって考える必要があります。

本当に誠実な発信者であれば、「無理をしないでください」「自分の生活を大切にしてください」と言えるはずです。

応援は、自分に余裕がある範囲で続けるからこそ、長く楽しめるものです。

おわりに

SNSは、多くの夢を叶え、多くの出会いを生み、多くの人の人生を豊かにしてきました。

その一方で、影響力が大きくなったからこそ、発信する側にも、応援する側にも、これまで以上に「距離感」を意識することが求められています。

「応援」と「依存」は違います。

「集客」と「過度な勧誘」は違います。

「ファンとの交流」と「心理的な支配」は違います。

互いを尊重し、「断る自由」と「無理をしないこと」を当たり前に認め合える関係こそが、本当に健全なファンコミュニティではないでしょうか。

SNSは人を幸せにする力を持っています。

だからこそ、その力を誰かを縛るためではなく、誰かの挑戦を支え、笑顔を増やすために使ってほしいと願っています。

応援は、相手だけでなく、自分自身も幸せになれるものであるべきです。

その原点を忘れないことが、SNS時代を安心して楽しむための最も大切な心構えなのではないでしょうか。

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