SNSで変わるモデルの仕事 01

SNSで変わるモデルの仕事01 | 杉山宣嗣

モデルという仕事は、いつの間にか大きく変わっていた

「モデルです。」

SNSを見ると、この肩書きをプロフィールに書いている人を本当によく見かけます。

一昔前まで「モデル」と聞けば、多くの人が思い浮かべるのは、パリやミラノ、東京コレクションのランウェイを歩くファッションモデルや、ファッション誌、雑誌、広告、カタログなどで活躍するモデルではないでしょうか。

多くのモデルはモデル事務所に所属し、キャスティングを経て仕事を得る。それが当たり前の時代でした。

ところが現在、InstagramやTikTokなどのSNSを開くと、「モデル」という肩書きの人が数え切れないほどいます。

もちろん、その中には企業広告やアパレルブランドの仕事をしている人もいれば、これからモデルを目指す人、趣味として活動している人もいます。

一方で、「撮影会モデル」「ポートレートモデル」「SNSモデル」など、以前はあまり耳にしなかった肩書きも増えました。

「モデルが増えた」のか、それとも「モデルという仕事が変わった」のか。

私は、後者のほうが現在の状況を正確に表していると思います。

そして、この変化はモデルだけではありません。

実は、カメラマンもまったく同じ変化を経験しているのです。


モデルは「選ばれる職業」だった

以前のモデル業界は、現在よりもずっと入口が狭い世界でした。

モデルになるためには事務所へ所属し、オーディションを受け、仕事を紹介してもらう。

企業や出版社、アパレルメーカー、広告代理店などから依頼が入り、その案件に適したモデルがキャスティングされる。

コレクションモデルなら身長や体型、ウォーキング技術。

ファッション誌なら誌面の世界観を表現する能力。

広告モデルなら商品の魅力を伝える表情や演技。

求められる能力は仕事によって異なりますが、共通しているのは「企業が求める条件に合わせて選ばれる」ということでした。

つまり、モデルという仕事はBtoBの世界だったのです。

企業と制作会社、出版社、広告代理店、モデル事務所が仕事を作り、その中でモデルが起用される。

一般の人が直接モデルへ依頼する機会は、ほとんどありませんでした。

もちろん現在でも、この市場は存在しています。

コレクションモデルやファッション誌モデル、広告モデルは、今でも高い専門性を持った職業です。

しかし、それだけがモデルではなくなりました。


SNSが「モデルになる入口」を変えた

この流れを大きく変えたのがSNSです。

以前なら、モデルとして活動するには、誰かに見つけてもらう必要がありました。

事務所に所属し、オーディションを受け、仕事を紹介してもらう。

しかし現在は違います。

InstagramやTikTokなどで自分自身を発信し、多くのフォロワーを持てば、それ自体が仕事につながることがあります。

企業から直接DMで仕事の相談が来ることも珍しくありません。

アパレルブランドのモデル。

コスメのPR。

ライブ配信。

動画出演。

ECサイトの商品紹介。

従来にはなかった仕事も数多く生まれました。

つまり、「モデルになる入口」が事務所だけではなくなったのです。

これはモデル業界にとって、非常に大きな構造変化でした。


「モデル」という言葉の意味が広がった

その結果、「モデル」という肩書きが表す意味も大きく変わりました。

以前ならモデルと言えば、

  • コレクションモデル
  • ファッション誌モデル
  • 広告モデル

このイメージが中心でした。

しかし現在では、

  • ECモデル
  • 撮影会モデル
  • ポートレートモデル
  • SNSモデル
  • インフルエンサー
  • ライブコマース出演者

なども広く「モデル」と呼ばれています。

さらに、自分で企画し、自分で撮影し、自分で編集し、自分で発信する人もいます。

モデルであり、クリエイターであり、インフルエンサーでもある。

そんな活動スタイルが一般的になりつつあります。

つまり、「モデル」という職業が一つだった時代から、「モデル」という大きなカテゴリーの中に、さまざまな仕事が生まれた時代へ変わったのです。


カメラマンも、まったく同じ変化を経験している

実は、この変化はカメラマンにもそのまま当てはまります。

以前、「プロカメラマン」といえば、多くの人が思い浮かべるのは、広告写真家や雑誌カメラマン、出版社や企業から依頼を受けて仕事をする人たちでした。

仕事は企業から発注され、広告代理店や制作会社を通じて進んでいく。

こちらも典型的なBtoBの市場です。

しかし現在はどうでしょう。

プロフィール写真。

家族写真。

七五三。

成人式。

婚活写真。

マッチングアプリ用プロフィール。

SNS用ポートレート。

こうした個人向けの撮影市場が急速に拡大しました。

SNSやホームページを見て、一般の人が直接カメラマンへ依頼する。

以前にはほとんど存在しなかった市場が、一つの大きな仕事として成立しています。

つまりカメラマンも、モデルと同じようにBtoBだけの世界から、BtoC市場を持つ職業へ変化したのです。


「プロ」という言葉の意味も変わった

この変化によって、「プロ」という言葉の意味も以前とは少し違ってきました。

昔は、事務所に所属している。

企業から仕事を受けている。

雑誌や広告で活動している。

そうしたことが「プロ」であることの分かりやすい基準でした。

しかし現在は、それだけでは判断できません。

事務所に所属せずに企業案件を数多く手がけるモデルもいます。

広告の仕事はしていなくても、ECやSNSで安定した収入を得ている人もいます。

カメラマンも同じです。

写真事務所に所属していなくても、個人向け撮影で高い評価を得ている人もいれば、SNSだけで全国から依頼を受けている人もいます。

反対に、「モデル」「フォトグラファー」という肩書きは、現在では誰でも名乗ることができます。

つまり、肩書きだけでは活動内容も経験も分からない時代になったのです。

昔は所属が信用でした。

今は実績が信用です。

そして、その実績以上に重要なのが、「信頼」なのではないでしょうか。

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