

AI動画生成が急速に進化しているが、実際に運用してみると意外と大きな問題になるのが生成コストである。
特にSNS向けの動画制作では、完成品よりも試行回数の方が重要になる。
どれだけ優秀なモデルであっても、一発で理想通りの映像が出力されることは少ない。むしろ複数回生成しながら方向性を探り、徐々に完成度を上げていく作業になる。
そのため私が最近よく使っているのが、1080p・5秒動画を低コストで生成できる「動画2.5ターボ」である。
最高品質のモデルではない。
しかしSNS投稿やショート動画用途であれば十分な品質を持っており、何よりも生成コストを大幅に抑えられる。
AI動画制作では「一発で当てる」よりも「何度も試せる」ことの方が重要な場合が多い。
言い換えれば、AI動画制作においては性能よりも試行回数が作品のクオリティを決めることがある。
そう考えると、この廉価版モデルは非常に優秀であり、現実的な選択肢になる。
そして、このコストパフォーマンスの高いモデルで特に実用的だと感じているのが、「始点」と「終点」の画像を指定する動画生成である。
AIに途中を考えさせる動画生成
この方法は非常にシンプルである。
・映像の最初の画像(始点)を指定する
・映像の最後の画像(終点)を指定する
・その間をAIに補完させる
たったこれだけである。
従来の映像制作であれば、始まりから終わりまでのカメラワークや被写体の動きを人間が設計する必要があった。
しかしAI動画の場合は、始点と終点を与えるだけで、その間のストーリーや動きをAIが推測して生成してくれる。
これは従来の映像制作とはまったく異なる発想であり、AIならではの制作手法と言える。
今回使用した始点画像と終点画像
今回使用した画像は実写ではなく、どちらもAI生成画像である。
まず全身が見える画像を生成し、その後に顔のアップ画像を生成した。
つまり、
「人物がこちらへ歩いてくる」
という始点画像と、
「人物のアップ」
という終点画像を用意したのである。
この2枚を動画モデルへ入力すると、AIは自動的にその間の動きを考える。
歩いてくる。
徐々にカメラへ近づく。
どこかで立ち止まる。
アップになる。
この一連の流れをAIが勝手に作ってくれる。
もちろん完全にこちらの意図通りになるわけではない。
しかし、人間が細かく指示しなくても自然な映像を組み立ててくれることが多い。
実はかなり無茶なカメラワークをAIにやらせている
今回の動画は実際に撮影しようとするとかなり難しい。
被写体が歩いている。
カメラも移動している。
さらに引きの画からアップへ移行している。
場合によってはジンバルやドリー撮影が必要になるだろう。
被写体との距離管理。
フォーカス管理。
カメラの移動速度。
歩行速度との同期。
こういった要素をすべて成立させなければならない。
経験豊富なシネマトグラファーでも簡単ではない撮影になると思う。
しかしAIはそのような複雑な撮影工程を理解しているわけではない。
単純に始点と終点を見て、その間を補完しているだけである。
それにもかかわらず、人間が実際に撮影したようなカメラワークを作り出してしまう。
ここにAI動画の面白さがある。
技術を再現しているというよりも、結果としてそれらしく見える映像を生成しているのである。
一回目は失敗した
ただし一度目の生成では破綻が発生した。
衣装が変化してしまった。
髪の描写も安定しなかった。
人物動画では非常によくある現象である。
特に今回のように、
・移動量が大きい
・画角変化が大きい
・全身からアップへ移行する
といった条件が重なると、一貫性を維持する難易度が上がる。
AIは人物そのものを理解しているわけではない。
そのため途中で服の形状や髪型が変化してしまうことがある。
私の基本方針はまずAIに任せること
こういう時に私が行う方法はシンプルである。
まずAIができそうな始点画像と終点画像を作る。
その後は細かく制御せず、一度AIに任せる。
まず結果を見る。
良ければ採用。
ダメなら修正。
この流れである。
最初から大量のプロンプトを書いて制御しようとはしない。
なぜなら、AIは人間が予想しない良い結果を出してくることがあるからだ。
まず能力を確認する。
その後に不足部分だけ修正する。
これは写真のレタッチにも少し似ている。
最初から細部ばかり触るのではなく、全体を見ながら必要な部分だけ調整する感覚である。
面白かったのは、AIが途中で一度振り返って横を見る仕草を作ってきたことだ。
人間なら演出として加えたくなる動きだったが、今回は終点画像までの流れをシンプルに見せたかったので採用しなかった。
5秒という短尺の中では、視線移動や振り返りの芝居を入れるよりも、被写体の移動とカメラワークに情報量を集中させた方が映像としてまとまりが良いと感じた。
このあたりの「予想外だが魅力的な提案」をしてくるのも、AI動画の面白いところだと思う。
今回の修正プロンプト
今回追加した修正プロンプトは非常に短い。
『自然な動きで、画像の破綻がないように。洋服や髪の描写に注意して』
これだけである。
長いプロンプトを書いたわけではない。
しかし2回目の生成では大きく改善された。
AI動画では長文プロンプトが必ずしも有利とは限らない。
むしろ問題点だけを明確に伝える方が改善することも多い。
今回もその典型例だった。
音声は成り行き任せ
音声については基本的にAIに任せている。
もちろん後から効果音を追加することもできる。
BGMを入れることもできる。
しかしまずは生成された音を確認する。
今回は2本目の修正版で波の音のような環境音が自然に生成された。
映像との相性も良かった。
そのため今回はそのまま採用している。
AI動画では映像だけでなく音の偶然性も面白い。
意図しなかった環境音や空気感が作品の魅力になることもある。
AI動画で重要なのは試行回数
今回改めて感じたのは、AI動画制作において重要なのは完璧なプロンプトではなく試行回数だということである。
始点と終点を決める。
まず生成する。
結果を見る。
問題があれば修正する。
再度生成する。
この繰り返しが最も効率的である。
特に低コストモデルであれば何度でも試せる。
AI動画は人間が細部を設計する時代から、人間が方向性を決めてAIに解釈させる時代へ移行しているのかもしれない。
始点と終点だけを与え、その間をAIに想像させる。
この手法は今後さらに実用的になっていくと感じている。


