
AdobeのAIはなぜ“弱く見える”のか
AdobeのAI機能はここ数年で急速に進化している。
特にAdobe Photoshopでは、
- 生成塗りつぶし
- 生成拡張
- 被写体選択・オブジェクト選択の精度向上
- 背景生成
といった機能が実装されている。
にもかかわらず現場では、
- 思ったほど使えない
- 中途半端
- 決定打にならない
と感じる場面が多い。
これは単なる性能不足ではなく、構造的なジレンマによるものだ。
ジレンマ①:AIは強いが“制御できない”
まず誤解を外す必要がある。
AdobeのAIは弱くない。
例えば:
■ 生成塗りつぶし
- 不要物除去
- 欠損部分の補完
- 背景の自然な生成
👉 単体機能としては非常に高性能
■ 生成拡張
- 画角外の補完
- 構図の拡張
👉 撮影後にフレーミングを変えられる
■ 選択ツールの進化
- 髪の毛レベルの精度
- 人物・被写体の自動抽出
👉 マスク作業の時間を大幅削減
■ 生成背景
- 背景の差し替え
- 簡易的な合成
ここまで見ると、
制作がほぼ自動化されているように見える
しかし問題はここから。
ジレンマ②:結果は出るが“コントロールできない”
AI機能の共通点は:
- 一発でそれっぽい結果を出す
- 内部処理がブラックボックス
これにより何が起きるか。
■ 微調整ができない
- 少し明るくしたい
- もう少し質感を残したい
👉 操作で詰められない
■ 再現性が低い
- 同じ処理でも結果が揺れる
- カット間で統一できない
👉 プロ用途では不安定
ジレンマ③:非破壊編集との衝突
Adobe Photoshopの本質は
コントロールできること
- レイヤー
- マスク
- 数値調整
一方AIは
コントロールを省略する技術
この2つが衝突する。
■ AIを強くすると
- 操作は簡単
- しかし調整不能になる
■ AIを弱くすると
- 調整は可能
- しかし効率が落ちる
👉 どちらにも振り切れない
ジレンマ④:「作るAI」と「調整ツール」の矛盾
生成塗りつぶしや生成背景は本質的に
“作るAI”
しかしAdobeは
“調整するツール”
この違いがズレを生む。
■ 例
- 背景を生成する → できる
- その背景を既存カットと統一する → できない
👉 部分的に強く、全体では弱い
ジレンマ⑤:プロ用途との不整合
プロの現場では:
- カット間の統一
- ブランドトーン
- 再現性
が重要になる。
しかしAI機能は:
- 単体で完結する処理に強い
- 全体最適には弱い
👉 結果:
使えるが主軸にはならない
なぜ“中途半端”に見えるのか
ここまでを整理すると:
- 単体性能は高い
- しかし制御できない
- 全体統一ができない
- 再現性が低い
👉 つまり
“部分最適には強く、全体最適には弱い”
現場での正しい使い方
この前提で使うと評価が変わる。
■ AIに任せる
- 不要物除去(生成塗りつぶし)
- マスク生成(選択ツール)
- 画角調整(生成拡張)
■ 人間がやる
- トーン設計
- カット間統一
- レタッチの質感
👉 役割を分けると初めて機能する
結論
AdobeのAIは中途半端なのではない。
“制御可能な範囲に制限されたAI”
そしてその結果、
部分的には強く、全体では使い切れない
という評価になる。


