制作工程でのAI生成位置

制作工程でのAI生成位置 | 杉山宣嗣

制作現場でAI生成はどこに位置づくのか

最近、ビジュアル制作の現場でよく聞くのが
「AIはどこで使えばいいのか分からない」という声です。

画像生成AIは確かに強力ですが、
制作の流れを理解せずに導入すると、かえって品質が下がることがあります。

例えば、

  • AIで作ったビジュアルがブランドの方向性と合っていない
  • 写真のリアリティが必要な案件にAI画像を使ってしまう
  • 制作の途中工程を飛ばしてAI生成に頼る

こういうケースですね。

これはAIの性能の問題というより、
制作工程のどこにAIを置くのかが整理されていないことが原因です。

ビジュアル制作は、
単に画像を作る作業ではなく、設計 → 制作 → 運用という流れで成立しています。

この構造を理解せずにAIを導入すると、
「AIで作れるかどうか」という発想になってしまうんですよね。

本来はそうではなく、
制作工程の中でAIが機能する場所を見極めることが重要です。


なぜ制作現場で混乱が起きているのか

制作や写真の現場で混乱が起きている理由はシンプルです。

AIが「制作ツール」として語られているからです。

多くの解説では、

  • AIで画像を作る
  • AIでビジュアル制作をする
  • AIでデザインを生成する

という説明がされています。

でも実際の制作現場では、
ビジュアルはいきなり生成するものではありません

まず行われるのは、

  • 企画設計
  • コンセプト決定
  • ブランドとの整合確認
  • 使用媒体の整理

といった意思決定の工程です。

この工程があるからこそ、
ビジュアルの方向性が決まり、撮影や制作が始まります。

つまり、制作の本質は
何を作るか決めること」なんですよね。

ここをAIに任せるとどうなるか。

コンセプトの整合が取れないビジュアルや、
ブランドの意図とズレた画像が生まれやすくなります。

だからこそ、AI生成を考えるときは

制作工程のどこにAIを置くのか

を先に整理する必要があります。


ビジュアル制作の工程はどう変わっているのか

ビジュアル制作の流れを整理すると、
大きく次の工程に分けられます。

1 企画・コンセプト設計

ここでは

  • ブランドの方向性
  • 表現のトーン
  • 使用媒体
  • ターゲット

といった制作の基準が決まります。

この工程は
市場理解と判断が必要な領域なので、
今も人の役割が大きい部分です。

2 ビジュアル設計

次に、

  • 構図
  • 世界観
  • ライティングイメージ
  • シチュエーション

などを設計します。

ここで初めて
「どんな写真やビジュアルが必要か」が具体化します。

3 素材制作

ここが、従来は

  • 写真撮影
  • スタジオ撮影
  • ロケ撮影
  • 小道具制作

などが行われてきた工程です。

この部分で
AI生成が使えるケースが増えています。

例えば

  • 商品イメージの背景生成
  • 抽象的なブランドビジュアル
  • シチュエーションのバリエーション制作

などですね。

今までは制作・撮影するしかなかったものでも、
AI生成で成立するケースが増えています。

4 展開・差し替え

広告やECでは、

  • サイズ違い
  • 色違い
  • シーン違い
  • 国別展開

などのビジュアル展開が必要になります。

この工程は

量産・差し替えが前提

なので、AI生成が機能しやすい領域です。


実務で起きている具体的な変化

制作現場では、すでに次のような使い方が増えています。

広告ビジュアルの背景生成

商品撮影を行い、
背景やシチュエーションだけをAIで生成するケースです。

今までは、

  • ロケーション手配
  • 美術制作
  • セット構築

が必要でした。

それが、
撮影素材をベースにビジュアルを展開できるようになっています。

ECビジュアルの展開

ECでは

  • 季節バリエーション
  • カラー違い
  • 使用シーン

などの画像が大量に必要になります。

今までは撮影するしかなかったこれらの画像も、
AI生成で展開できるケースが増えています。

モデル撮影のシーン展開

最近特に変化しているのがここです。

スタジオでモデルやタレントを撮影し、
1点の写真素材から複数のシチュエーションを展開するという方法です。

例えば

  • カフェのシーン
  • オフィスシーン
  • 屋外シーン

などですね。

従来なら

  • ロケ撮影
  • セット制作
  • スタジオ変更

が必要でした。

今は
人物の撮影素材をベースに背景や環境を変えることが可能になっています。

この流れは、今後さらに増えていく可能性が高い領域です。


人の制作とAIの役割分担

制作工程を整理すると、
人とAIの役割は次のように見えてきます。

人が担う領域

  • 企画設計
  • コンセプト決定
  • ブランド整合
  • 表現の方向性判断
  • 実在性が必要な撮影

ここは
責任と意思決定が伴う領域です。

制作の価値は、
この部分にあります。

AIが機能しやすい領域

  • 背景生成
  • ビジュアルバリエーション
  • シーン差し替え
  • 量産展開
  • イメージ生成

これらは

  • イメージ共有ができている
  • 特定人物が必要ない
  • 多視点展開が前提

という条件のときに成立しやすい領域です。

制作工程で見ると、
素材制作の一部と展開工程にAIが入りやすいんですね。


制作設計としてAIを考える

AI生成は便利な技術ですが、
単独の制作手段として考えると失敗します。

重要なのは、

制作工程のどこに組み込むのか

という視点です。

  • 企画は誰が決めるのか
  • 実在性は必要か
  • 撮影素材は必要か
  • どこから量産するのか

こうした設計があって初めて、
AI生成は機能します。

AIは制作を置き換える存在ではなく、
制作プロセスの中で機能する要素です。

制作全体を俯瞰して考えると、
AIを導入すべき場所と、そうでない場所が見えてきます。

この視点を持つことが、
ビジュアル制作におけるAI活用の基本になると思います。